ウィントフックの奇跡
0:00The 6th Country
NAMIBIA
ワトケルワポ?
南アフリカの北に位置する国、ナミビアの首都ウィントフックに来ました。
旅の話とはズレてしまいますが、ここウィントフックの宿で、私にとって素敵なことが起こったので、今日はそのことについて記そうと思います。
ウィントフックでは、最初はCardBoard Boxという宿で一泊したのですが、思うところあって、翌日に別の宿Chameleon Backpackersという宿に移動。
宿の共有スペースで、いつものように絵を描いていると、それを見ていた中年男性が「僕も描いて欲しい」と話しかけてきました。
ひとりに「いいよ」と言ってしまうと「僕も」「私も」となり、キリがなくなってしまうので、正直あまりやらないようにしているのですが(心が狭くてごめんなさい)、その日は時間に余裕があったので、描いてあげることに。
ものの15分ほどで描いてあげると、彼はとても喜んだ様子で、記念写真をパチパチ撮り、周りの人に見せびらかしていました。
そしておもむろに私の隣に座り「僕はザンビアでこういう仕事をしているんだ」と渡してくれた名刺を見ると、どうやら彼は宝石商。
「見てごらん」
と袋に入ったルースの宝石をたくさん見せてくれました。
(あらー、ありがちなセールスかしらー)
って最初は正直思いました。
「絵のお礼に君には安くするよー」とかそういうやつかと。
でもね、違ったんです。
「どんな石が好き?」
と聞かれてまだ訝しんでいた私は、自分が旅ではいつも身につけているペンダントを見せて、
「私は10月生まれだから誕生石がオパールなの」
と適当に答えました。
すると彼は、ぱっと見は透明だけど光を受けると七色に光る石を2粒出し、
「最近マダガスカルで採れたオパールだよ」
と私の手のひらに乗せ、
「これを君にあげるよ」
と言ってきました。
「いえいえいえいえなにいってるんですかもらえませんよこんなもの!!!!!」
と即返すと、
「聞いて。僕はクリスチャンなんだ。キリスト教では、与えられたら与えよと教えがある。そして与えたら、今度は与えた僕自身が神からの恩恵を受けられるんだ。君は僕に素敵な絵を描いてくれた。だから君はこれを受け取らなければいけないんだよ。」
と。
はい、私、号泣。
「それにね。」
と彼は続ける。
「僕の名前はNOE。クリスマスに生まれたんだ。だからNOELから取って、両親は僕にNOEと名付けたんだ。僕は本当に神の加護を受けていると思っているんだ。」
神父か。
ノエさんは、じっと私の目を見ながら頑として私にその石を握らせ、「2粒ともあげるから、ピアスにするといいよ。じゃあ、僕は次の約束があるから、行くね。」と立ち去ってしまいました。
その石がこちら。
たった15分ほどで描いた絵と私との出会いをここまで喜び、その喜びを伝えるためにこんな素敵なプレゼントをくれるなんて。
これまで絵を描いてきた中で初めての経験でした。
石の質がどれほどのものかは定かではありません。
でも、間違いなくこれは、最高の宝石であり、私の宝物になりました。
そのあとも、宿ですれ違うたびにノエさんは慈愛のこもった眼差しとともに声をかけてくれ、私が砂漠へ旅立つ時も別れを惜しんでくれました。
なんで宝石商なんだ!
あなたは神父になった方がいいよ、ノエ!
って心の中で思ってましたが、もちろん言いませんでした。
そんな素敵な出会いがあったナミビア、ウィントフック。
忘れられない場所になりました。
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